DAY6(11/16)ファイナルクロス、渡辺学がヒート優勝&釘村忠も暫定ゴールドメダルを決める

DAY6(11/16)
ファイナルクロス、渡辺学がヒート優勝&釘村忠も暫定ゴールドメダルを決める

11月16日(金) ポルトガル・ポルティマン
第94回FIMインターナショナルシックスデイズエンデューロ 競技第6日 最終日

完走なんて当たり前だ

「完走できるかどうなんて考えてもいませんでした。ワールドトロフィチームのメンバーに選んでもらって、これだけたくさんの人に応援してもらい、これだけのサポート体制で走らせてもらったら完走するのが当たり前で、リタイアなんて考えられません。ベストを尽くす、それだけを考えていました」と話したのは、ISDE初出場のメンバーが3人いるチームの中でも、もっともエンデューロの経験が浅い馬場大貴だ。日本代表という重責、期待を背負って、未知の6日間に挑んだ4名、そしてチームマネージメント陣、メカニック、数多くのヘルパーたちの挑戦は最終日を迎えた。

スーパーモタード形式だが?

ファイナルクロスの舞台はポルティマンサーキットのあるアルガルヴェレースリゾート内にあるレーシングカート用のサーキットだ。カートコースとはいっても、変速機付きのマシンに適応する大規模なもので、そのコースサイドのグラベル部分をメインにダートコースを設定、「スーパーモタード形式」という触れ込みだったが、舗装部分は横切る程度。ストレートエンドからゆるやかに右にベンドしている部分だけが唯一、舗装部分でのコーナーというレイアウトで、エンデューロタイヤに、ダート用のプロテクターという装備のライダーにも余分なリスクを与えるものにはなっていない。ファイナルクロスがどうなるのか心配されていたが、結果はオーライといったところだ。アルガルヴェは晴天。5日間ずっと吹いていた冷たい風も今日はおとなしく、小春日和がライダーたちを迎えた。

真田治というライダー

クラブチームクラスから排気量クラス別のヒートが組まれ、途中、ヴィンテージトロフィのレースを挟み、ウイメンズトロフィのあと、ワールドトロフィとジュニアトロフィ混合のE1、E2、E3クラスと進行。全20ヒートが、朝9時から16時まで続く。最初のヒートはクラブチームクラスの2ストローク125/4ストローク250cc以下のC1クラス。今回、日本のクラブチームクラスの参加者で唯一の完走者となった真田治がグリッドに並んだ。

「キツい6日間でした。でも、最初は自分が完走できるレースだとは思っていなかったので、すごくうれしいです。実はスタート前に、もともと傷めていた膝の調子が悪くなってしまい、痛みをこらえてのライディングが続いていました。難しいルートになった3日目は、前進するのがやっとの状態になってしまって、これはもうだめだと思った時もありましたが、なんとか乗り切って5日目に生き残った時、やっと完走できるかもしれないと思うようになりました」。最後の力を振り絞ってチェッカーを受けた真田がインタビューに応じてくれた。「今後、自分がISDEを走ることはないかもしれませんが、本当に素晴しい経験をすることができたと思っています。この経験を次の世代にライターたちに伝えるのが役割だと思っています。クラブチームをとりまとめてくれた寺島さんはじめサポートの皆さん、応援してくれた皆さん、妻にも改めて感謝の言葉を伝えたいです」と、ほっとした表情を見せた。

「スピード、まずはこれです」

E1クラスは2ヒートが組まれ、渡辺学と馬場大貴は同じスタートラインについた。ファイナルクロスは一斉スタートのレース形式をとってはいるが、スタートからフィニッシュまでの所要時間が成績になるという点では、他のスペシャルテストと同じだ。順位ではなく、タイムとの戦いはまだ続いている。15秒前のボードが掲示され、声援がエンジン音でかき消された一瞬後、緑と赤のポルトガル国旗が振り下ろされた。

「タイムトライアルとはいってもレースですからね。どんなレースでも勝ちたいと思うものですし、コースサイドで応援してくれている人たちのためにもいいところは見せたかったです」と、レース後に笑顔を見せたのは渡辺学だ。オープニングラップは3番手、2周目を終えた時にはトップに立ち、そのまま逃げ切ってトップでチェッカー。初めてのISDEを自分の戦略通りに攻略した感。「ISDEと同じ形式の全日本エンデューロには1度出ただけですし、タイヤ交換もこっちに来てからしっかり練習しただけで経験が浅いので不安はありましたが、1日目、2日目でだいぶん慣れて不安はなくなりました。6日間を通じて感じたのは、これはいわゆる耐久レースではなくて、モトクロスのスピードが必要なタイムアタックの繰り返しだということですね。難所的なところは確かにありますが、なんとかなるレベルでそこで速いかどうかは重要じゃない。とにかくスピードです」と強調する。「チャンスがあればまた出場したいですね。今後は、海外のラリーや他のエンデューロにもどんどん挑戦したいと思っています」と意欲を見せる。

力をつけて帰ってくる!

「いやー、くやしいですね。スタート直後に転倒してしまって、かなり追い上げたんですが、もっといいところを見せたかった」と話すのは馬場大貴。それでも大きくタイムロスすることなく無事に全日程を終えた。

「とにかく疲れました。体力もスピードも、まだまだ全然足りません。でもすごい経験ができたと思っています。モータースポーツの世界では必ずしも若いとは言えませんが、27歳という年齢でこういう機会が与えられたことに感謝しています。この経験は、ぼくのこれからの人生すべてに良い影響を与えてくれるとと思います」そしてこうも続ける「5日目が終わった時点では、もうISDEには出なくてもいい、自分の出る幕ではないと思っていましたが、今は、もっと力をつけてもう一度挑戦したいと思っています」。

ゴールドへの期待と不安

釘村忠は前日のクラッシュで肋骨と鎖骨を負傷した状態でスタートラインについた。スタートで飛び出してトップを快走しているようにも見えるが、身体は動きに堅さが見えたのは、やはり負傷の影響だろう。前半、首位をキープするが耐え切れず転倒。なんとか復帰して7番手でチェッカーを受けた。「ありがとうございます。疲れましたが終わってみたらあっというまの6日間でした。5日目にクラッシュして身体を傷めたのがキツかったですね。鎖骨は折れていると思います。それが無ければ今日はもっといいところを見せられたと思うんですが…」とくやしそうな表情を見せる釘村は、しかしファイナルクロスを終えてゴールドメダル圏内で6日間を仕上げることに成功した。

「まだ正式結果が出ていないので、メダルのことはわからないですが、でも獲れていたら最高ですね。最初はゴールドなんて絶対無理だと思っていたので意識していなかったんですが、1日目、2日目と走ってみて、得意のサンド路面だったこともあって、希望が出てきました。結果が楽しみです。今後ISDEに出るべきなのは、自分よりも、もっと若いライダーだと思います。この経験を次に手渡していく役割をできたらと思っています」と話した。

苦難の6日間を終えて

最大排気量のE3クラスは、出走台数が少ないため、前橋孝洋も、このクラス首位のダニエル・サンダース、ダニー・マッカニーらと同じレースを走る。前橋にとって2017年フランス大会以来、2度目のISDEは苦戦の連続だった。

「すべてが足りないと感じました。スピード、体力、それに栄養の管理なども含めて、ISDEを走るためには、すべてを勉強しなおさなきゃいけないと思います」と振り返る。スタートは最後尾から3番手。ファイナルクロスの最終ヒート。朝はウェットだった路面はすっかり乾いてダストが多く、そしてフラットだった路面は荒れ放題となり、最後までライダーを試し続けた。最終ラップ、ダニエル・サンダースらが前橋を周回遅れにして、6日間の競技はすべて終了した。

日本は13位。次代を担うのは誰だ

6日間を終えて渡辺学はE1クラス24位、馬場大貴29位。E2クラスの釘村忠は24位、E3クラス前橋孝洋は完走者中最下位の21位という個人成績。ワールドトロフィチームクラスでは、17カ国中13位という最終結果となった。チームとしては9位という目標を掲げていたが届かなかった。しかし、他国と順位を競うレベルに到達したという印象を与える4名の戦いであったことをお伝えしたい。

ワールドトロフィを手にしたのはUSA代表チーム、ウイメンズトロフィもUS女子代表、そしてジュニアトロフィはオーストラリアチームという結果。ISDE2019大会は、青空の下で閉幕した。

レポート 春木久史

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