DAY5(11/15)チームを牽引する釘村に黄色信号、1日を残してクラッシュ

DAY5(11/15)
チームを牽引する釘村に黄色信号、1日を残してクラッシュ

11月15日(金) ポルトガル・ポルティマン
第94回FIMインターナショナルシックスデイズエンデューロ 競技第5日

祝祭は終盤へ  

天気予報からは数日ぶりに雨の記号が消えた。朝6時、ポルティマン市街の気温は7度前後。DAY5のスケジュールは走行距離285.8km、オンタイムでの走行時間は7時間30分だ。週末に近づいて、取材班が利用しているホテルには一般の客が増えているが、その中にはエンデューロが目当ての人たちもいるようだ。今日からはスペシャルテストや、見所の難所のようなセクションにもたくさんのギャラリーが集まるだろう。ヨーロッパ全土のエンデューロファンにとって、ISDEは最大のお祭りなのだ。

長い戦いは続く  

フルレングスでの競技の最終日。今日を乗りきればあとは明日のファイナルクロスを残すのみだ。昨日、35分のディレイとなり、その数字のままであればタイムオーバーの裁定となる前橋孝洋だったが、救急車の侵入による強制停止によるタイムロスが酌量されて、ペナルティは解消された。チームジャパンは4人とも無事にスタートの手順に入った。過酷な走行に、マシンは各部に少しずつダメージを受けている。スタート前10分間のワークタイムに、釘村はフロントブレーキの修理の続き、渡辺は前日できなかったフロントタイヤを交換、馬場はブレーキパッド交換、前橋はリアフェンダーの修復などを行い、疲れた身体で長いルートに消えていった。

試されるライダーたち  

朝一番のクロステストが始まったのは7時30分頃。次第に明けていく空は、透き通ったブルーに色を変えていく。風は冷たい。釘村忠、渡辺学、馬場大貴、そして前日は一旦リザルトから消えていた前橋孝洋も順調にテストをこなしていく。この日初めて使用するスペシャルテストはコンディションも良好。

ルート全体も、ハードだった前日までに比較すると走りやすいもので、ポルトガルのシックスデイズもフィナーレに近づいていることをライダーたちに感じさせた。しかし、やはり2周目にはワダチ、ギャップが成長。DAY3、DAY4でも使用したテストはさらに荒れ放題となり、ライダーのスキルをこれでもかと試してくる。

タフな一日  

そんな状況下、釘村忠にとってのDAY5はこれまでで最大の試練の一日となった。「最初のエンデューロテストで大転倒して身体を打ってしまいました。それからは、痛みに耐えながらのライディングになってしまって…」。その後もクラッシュがありライト周りを破損。タイムチェックで応急修理するシーンもあった。ハンドルバーが曲がるほどの衝撃だった。

「キツかったです。でもなんとか5日目を乗りきったので、明日もしっかり走ってできるだけチームの成績に貢献します」と続けた。DAY5終了後の成績はE2クラス26位で、前日よりひとつポジションアップ。首位のテイラー・ロバートとのタイム差は10%以内に収めて現在のところゴールドメダル圏内を維持している

国代表を名乗る資格 

馬場大貴も前日の30位から29位と、E1クラスの順位をひとつ上げた。「新しいテストも最初は走りやすかったんですが、2周目には信じられないぐらい荒れていて、思うようには走れなかったです。体力的にもギリギリって感じです」とパルクフェルメにバイクを収めた直後のインタビューに応じた。

「一応、全部オンタイムで競技を続けることができたのでホッとしていますが、でもISDEに出るんだったら、もっともっとスピードも体力もつけなきゃだめですね。今の自分のスキルだと正直、恥ずかしいです。日本代表だって自信を持って言うためには、もっと力をつけなきゃいけないですね」と5日間を振り返る。「今日は昨日に比べると転倒も少なかったし全体としては順調でした。明日、最終日ですけど、あと一日、みなさんの応援よろしくお願いします」と結ぶ。

揺るがない渡辺の戦略  

「順調でしたね。昨日までのルートより走りやすかったし、テストもそれほど荒れてなかったと思います。転倒もないですよ」といつも通り淡々と話すのは渡辺学だ。テストでの走りからは疲労の色も見えず、ワークタイムでの作業中も冷静さを崩さない。「終盤だとはいっても全力で攻めてしまえばミスもしてしまいますから、実力の範囲内で攻めました。明日のファイナルクロスが、舗装のサーキットだという話ですが、まだそれも確定していないのがちょっと心配ですね。どんな競技にも対応できるように備えます」。渡辺のE1クラスでの順位は前日よりひとつ下がって25位。ここまでのテスト合計約4時間50分で、E1クラス首位のジョセップ・ガルシアとの差は35分強だ。

前橋は自分を取り戻す  

ここまで苦戦が続いていた前橋孝洋だが、この日は順調に競技を終えてパルクフェルメに戻ってきた「テストで一度、フロントを滑らせて転倒しちゃいました。でも昨日より全然走りやすかったです。相変わらず風は強かったけど、太陽が出ていて暖かかったし。難易度が高いと表記されていた区間も、走ってみたらそうでもなくて、ちょっと楽でした」と話す前橋は、その言葉通り、前日の焦燥しきった顔とは正反対で元気そうだ。「フランス大会の時とは全然違いました。キツかったです。みなさんのおかげで5日目も走りました。明日一日、がんばります」。E3クラスでの順位は、リタイアした選手を除いた21名中の最下位だ。

最後の決戦へ  

ワールドトロフィチームクラスのチームジャパンは、再びポジションをひとつ上げて、17カ国中13位。上位争いはUSチームが次第にペースを上げて、2位のオーストラリアとの差を拡大。2分強のリードを築いて最終日のファイナルクロスを待つことになった。3位はイタリア代表でUSチームとの差は12分弱。ウイメンズトロフィチームクラスもUSチームが首位だが、2位ドイツとの差を前日の44秒から3分20秒にまで拡大し、2007年以来のトロフィ奪還の足場を固めた。23歳以下のジュニアトロフィチームクラスはオーストラリアが首位で、2位イタリアは4分差でファイナルクロスにわずかな希望をつなぐ。現在のところ、ファイナルクロスはポルティマンサーキットに隣接するカート用サーキットで、スーパーモタード形式で行われるとの情報だが、確定したものではない。

レポート 春木久史

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