DAY1(11/11)釘村、渡辺にゴールドメダルの望み

DAY1(11/11)
釘村、渡辺にゴールドメダルの望み

11月11日(月) ポルトガル・ポルティマン
第94回FIMインターナショナルシックスデイズエンデューロ 競技第1日

リアル・シックスデイズ

南米チリでの開催となった2018年大会からドラマの舞台は欧州に戻ってきた。かつてダカールラリーの舞台ともなったポルティマンの気候、地形は、しかしチリのそれにも良く似て、乾燥した砂漠、土漠が広がる大地。砂、岩、そしてダストがエンデューロライダーたちを試す。初日のルートはトータル280km、スペシャルテストは全部で7本、走行時間は8時間に及ぶ。ISDEでは、250〜300kmのルートを1日1周するフォーマットの年と、150km程度のルートを1日2周する設定の年があるが、今年は後者。2周目には荒れたコースを走ることになるという点で、1日1周の時よりもタフな競技になると言われているが、夕方のパルクフェルメに戻ってきたライダーの表情には、その過酷さが滲み出ているようだ。長い1日。しかし、まだ1日が終わったに過ぎない。あとまだ5日間、1200kmの走行距離がライダー、そしてチームを待ち受ける。

暗闇のスタート

1組目のスタートはまだ夜が明け切らない午前7時。真っ暗なパルクフェルメからワールドトロフィチームクラスのライダーからワーキングエリアへとマシンを移動させる。チームジャパンの先頭は渡辺学。6時55分にYZ250FXを押してワーキングエリアに移動し、平田メカニックらの助言を受けながら最終チェックを行う。「ルールが良くわからないから、誰かヘルメットかぶって後ろに乗ってよ(笑)」と冗談を言うほどの余裕を見せ、まもなくスタートラインに向かった。続いて1分後に馬場大貴、7分後にE2クラスの釘村忠、そして5分後に前橋孝洋が、白んでいく空の下、ポルティマンサーキットを後にした。」

苦戦の前橋

夜半から続いた小雨は、スペシャルテストの路面を湿らせ、わずかにダストを抑える役割をしてくれたようだったが、それでもライダーの視界を奪うには充分な量のダストがスペシャルテストテスト以外のトレールでも目立った。前橋孝洋は、そうしたコンディションの下、ライディングのリズムをつかむのに苦労していた。序盤のテストから転倒が多く、移動区間のトレイルでもミスを繰り返していた。

「ガレや深いサンドが多くて、フランス大会に比べてもタフな競技じゃないかと思っていましたが、予想していた通り、少し苦戦してしまいました」という前橋は、中盤、大きく転倒し、頭部に衝撃を受け、さらに調子を崩してしまった。結局、タイムチェックで1分遅れのペナルティを受けてしまう。「ちょっと疲れていますが、怪我はないので大丈夫です。明日はもっとコースも荒れているし、先は長いので慎重に攻めて行きたい」と続ける。

前橋のリザルトはE3クラス25名中/23位。

ISDEの洗礼を受ける

最高気温は平地で15℃前後、標高の高いところでヒトケタの寒さ。さらに、降り続ける雨がライダーの体温を奪う。スペシャルテストのスタートに到着したライダーたちが、空ぶかししたエキゾーストでかじかんだ手を温める姿も見られた。

馬場大貴は序盤の転倒でフロントブレーキが不調となり、その影響でタイムが伸びないテストがあったが、なんとかタイムロスを最小限に抑えてフィニッシュまでつなげた。

「フロントブレーキがかかりっぱなしになってしまって、早くもここでリタイアか! って思いましたけど、なんとか直して走り続けることができてよかったです。体調ですか? 疲れました。1日が長いので。でも大丈夫ですよ。明日はまた元気に走れます」。

フロントブレーキの不調をはじめ、馬場のマシンにはいくつか修理を必要とする部分がある。「明日の朝のワークタイム(スタート前の10分間)はけっこうやることがありますね」と表情を固くした。馬場のリザルトはE1クラス41名中36位。

「これなら最後まで攻められる」渡辺の自信

「思っていたよりも体力的にはイージーでした。もっともっとハードな競技だと思っていたんですが案外余裕です」と話すのは渡辺学だ。

スペシャルテストで見せる走りにもキレがあり、取材班がこれまで見てきた日本人選手の中でも突出しているものを感じさせる。「今のところタイム的にはまだまだだと思いますが、このボリュームなら6日間でもしっかり攻めていけると思います」と、初日を終えて、初めてのシックスデイズに手ごたえを感じたようだ。渡辺の順位はE1クラス41名中36位。トップのジョセップ・ガルシアの46分台から7分強の差で仕上げた。「明日からは様子を見ながら少しずつタイムを詰めていく」と意欲を見せる。

ゴールドメダルへ快調な滑り出し

E2クラスをCRF450RXで走る釘村忠も、初めてのISDEとは思えない落ち着いた戦いぶりを見せる。

深いサンド質のテストを、高めのギアで450ccの特性を活かしてスムーズなラインで攻めた。「下見をしたときの印象と大きく違いませんでしたが、1周目は少し突っ込みすぎたり、焦ってタイムロスをする感じが多かったです。2周目はしっかり考えていい感じで走れたと思います」と振り返る。E2クラスでの順位は43名中31位。トップのテイラー・ロバートから3分43秒遅れでいわゆるゴールドメダル圏内で初日を仕上げている。

「明日はほぼ同じコースですが、新しいテストもあるのでやはり慎重に攻めます。疲れてはいないですね。でも早く休んでベストなコンディションで2日目をスタートしたいと思います」と続けた。チームジャパンのワールドトロフィチームクラスでの成績は17カ国中15位。目標ヒトケタまへの壁は厚い。

豪州、再び最強国へ

ワールドトロフィ争いは、初日から波乱の展開。史上最強と鳴り物入りで登場した英国チームは、序盤にエースのブラッド・フリーマンがクラッシュして腕を骨折して脱落。チーム成績は4位。首位はオーストラリア、2位は2016年に史上初の優勝を果たしたUSA、3位にイタリアがつける。オーストラリアを牽引するダニエル・サンダースは、個人総合でもぶっちぎりの首位。2位のジョセップ・ガルシア(スペイン)に30秒の大差をつけている。ウイメンズトロフィは、過去6連勝のオーストラリアがなんと3位。1位はドイツとこれもサプライズ。女子の2位はUSA、23歳以下のジュニアトロフィはオーストラリアが首位という初日の結果。

レポート 春木久史

END

DAY1 SpecialTest 1 2 3 4 5 6 7 Total
#140 渡辺学 6:47.11 6:54.19 8:29.15 7:09.78 7:13.58 8:33.35 6:53.66 52:00.82
+43.42 +37.53 +1:08.95 +57.46 +55.07 +1:16.33 +51.23 +6:27.71
(76位) (75位) (97位) (82位) (83位) (92位) (94位) (89位)
#141 馬場大貴 6:56.38 7:38.08 8:40.25 7:13.65 7:18.40 8:40.24 6:56.23 53:23.23
+52.69 +1:21.42 +1:20.05 +1:01.33 +59.89 +1:23.22 +53.80 +7:50.12
(91位) (106位) (101位) (86位) (87位) (94位) (95位) (96位)
#142 釘村忠 6:41.76 6:59.22 8:02.89 6:47.63 7:00.07 8:23.89 6:33.41 50:28.87
+38.07 +42.56 +42.69 +35.31 +41.56 +1:06.87 +30.98 +4:55.76
(69位) (85位) (78位) (50位) (71位) (81位) (63位) (75位)
#143 前橋孝洋 7:01.41 7:25.39 8:54.64 7:40.68 8:01.39 9:46.42 7:19.56 56:09.49
+57.72 +1:08.73 +1:34.44 +1:28.36 +1:42.88 +2:29.40 +1:17.13 +10:36.38
(98位) (101位) (103位) (102位) (104位) (104位) (104位) (103位)

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