4日前の8月24日は、マシンのセットアップに充てたチームジャパン。セットアップは、ヤマハ勢とKTMでパドックの都合上分かれておこなう形。昨日紹介したヤマハ勢のアウトサイダーズパドックは、まさにここでも威力発揮。ファクトリー体制で、セットアップに臨むことができた。
トップライダー向けキットサスに苦心する、鈴木健二
ヤマハ勢のマシンは、昨日も紹介したとおりISDEジャパン史上最強のマシン。だからこその、苦心もあった。特に鈴木が今進めているのがフロントサスペンションだ。
「サスのセッティングは、海外の選手とスピードが違うって言うのもあるし、自分に合わせてセットアップしていきたい。自分はすごく柔らかいのが好きなんで。サスは油面をさげて、つながりを良くして。リアは少し固いですが、出来る範囲で全部使いきれるようにセットアップしていきたいですね」
いつもの笑顔は見られず、緊張した面持ちで鈴木健二は続ける。
「エンジンは思った以上に良い。トルクの幅もあるし、力強い。スタンダードよりもパワーが上がっています。YZに近いですね。スタンダードのYZよりもトルクが出ているように思います。エンジンはパーフェクトです。ECUは、スタンダードからボルテックスに変えたんですが、高回転も良くなった。慣れればいい走りができる。自分のパフォーマンスを出せるんじゃないかな」
過去に2回のISDEを経験している鈴木健二だが、マシンにしても、サポートにしても体制が良くなっている。現場の環境もよく、チームの雰囲気もとても良いと言う。条件は整った感がある。
「今は4日前ですけど、もう今更でしょ? 全てをやって来てる訳だから。現地での食べ物にしてもそう、全てをやり尽くしてからのことなんで、あとはストレスをためないで走っていくってことじゃないですかね。直前のトレーニングとかはしていないです。下見でしっかり体を動かせています。時差ぼけもないですよ! 自分のポテンシャルって、自分でもうわかってるじゃないですか。その範囲で楽しんでやるだけです」
4日後にやってくるスタートに向け、鈴木健二がパーフェクトな状態に仕上がっていく。夕食の肉を焼きながら興奮気味に話す鈴木につられるかの様に、チーム員もだんだん熱を帯びていった。
何も変えることがない、理想のマシンとの出会い
逆に、内山裕太郎は理想のマシンに出会えたと言う。
「僕のイメージしてた理想のバイクだった」と内山裕太郎は清々しい笑顔を見せた。マシンに関してはかなり口うるさい方で、念のため、普段乗っているマシンのパーツを日本から持ち込んでいる。
「普段は自分の好みにセッティングをするのですが、これはパッと乗って、直すところがないなって思えた。やることないじゃん! って。よく作りこまれている。乗り心地が軽いですよ」
マシンの変更点は主に以下の5点だ。「まずはマスターシリンダー。レンタルマシンには古いタイプがついていました。自分は現行のタッチの方が好きなので、最新のものに変更。あと換えたのははブレーキ、ハンドル、レバー、ハンドガードくらいですね」ハンドルはZETAのSX3、ハンドガードはZETA、右のブレーキレバーをZETA(可倒式)を使用。
タイヤとムースはダンロップを使用している。タイヤは909でKYBのキットサスとのマッチングも良いようだ。
あこがれのISDEに、ついに触れた前橋
実は、前橋は「超」のつくヨーロッパエンデューロ・フリーク。見るものすべてが、憧れの対象だった。
「普段ビッグタンクマガジンで見てる世界がそのまま広がっている」一番の若手でありながら、落ついた様子で、言葉を1つひとつ丁寧に語る前橋。
パドックの空気を取り込んで、すでに馴染んでいるようにも見える。「今日はセットアップでなかなか見ることが出来なかったけど、昨日はいろいろ見て回りました。マシンもまだ準備出来ていないところもあったし、まだテントも立っていないような準備中のパドックだったけれど、面白いものもあって、もう少しゆっくり見てみたいですね」初めてのISDEをファンとしても楽しんでいる様子。「アウトサイダーの車両があって気になりました。あとは、ファリオリのスタッフの移動用のマシンにいろいろな違いがあって面白かったですね」
マシン作りも順調の様だ。「250EXC-Fは、とっつきやすいマシン。グリップが良いところだとグーっと進んでいく感じがあったんで、十分なパワーが250Fにありました。4st250だから重さも無いです。気になる事はないです。すんなりと受け入れられました。外車なんでホイールベースが少し長いかな、と思うぐらいですね」
マシンの変更点は、「ZETAのハンドガードはオープンのシールドに。ハンドル周りはBONSAIさんのARCレバーを使用し、グリップをarieteの柔らかいものに変更しました。それからグリップのドーナツ、ZETAのバーエンド、EKの3Dチェーンに換えました。伸びが少なく、かっこいいので。タイヤは今回IRCを使用します。中身はダンロップのムースにしています。チェーンガードのプレートは曲がらないやつに変えてますね」
毎日こなさなくてはならない工程をしっかり消化して、ISDEの世界を楽しみながら、溶け込んでもらいたいところ。
入念な日本での準備が、ここフランスでしっかり実を結びそう
滑川は、ISDEに参戦するにあたって、17シーズンを戦うマシンを500EXC-Fに変更。そのかいもあって、非常に相性がいい。
「普段乗ってるマシンなので、いつもどおり何にも変えずに乗る予定です。まだ4st500で完走した日本人がいなかったので、500で走りたかった」
ごく自然に500をチョイスしたような印象だが、大排気量のマシンに乗るためには相応の体力が必要である。マシンに合わせて乗り方の変更や、身体づくりは容易ではなかったはずだ。
「500に乗るときは、一生懸命乗らないように、ふわっと乗るようにしていす。体力を奪われてしまうから。筋トレもマシンに合わせて行っています。そうじゃないと500に失礼なんで、楽しく乗れるように体を作っています」
マシンの変更点は、ハンドルのカット、破損防止のガード類、その他はノーマルとのこと。その他はスタート前にサグ出しをする程度。スイッチも普段乗っている仕様のまま走る。「マイルドにするとワンテンポ遅い気がするので、ノーマルで行きますね」
フランス到着からの生活についても気になるところだ。
「日本食にこだわってはいないです。まず現場に来てから3日ですけど、環境に身体を慣らさないといけないですね。生活環境はいいです。メンバーがとても良くて、偶然ではなく、必然でこの仲間に入れたのが嬉しいです。無事終わったら涙を流す準備をしていますよ」
茶目っ気たっぷりに笑った。